エミリー・アンダーソン

(Emily Anderson)

全米日系人博物館プロジェクト・キュレーター、専門は近代日本史。2010年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で近代日本史の博士号を取得後、2010年から2014年までワシントン州立大学(ワシントン州プルマン)で助教として日本史を教え、2014年にはオークランド大学で博士研究員を務めた。著書には『Christianity in Modern Japan: Empire for God』(2014年、ブルームスベリー)があり、『Belief and Practice in Imperial Japan and Colonial Korea』(2017年、パルグレイブ・マクミラン)の編集を手掛けた他、日本および太平洋地域における宗教と帝国主義に関する多くの記事や本の章を執筆した。展覧会の企画者としても幅広い経験を持ち、「Boyle Heights: Power of Place」(2002―2003年、全米日系人博物館)と「Cannibals: Myth and Reality」(2015年―、サンディエゴ人類博物館)の共同キュレーターを務めた。現在、ダンカン・ウィリアムズ(南カリフォルニア大学)と共に展覧会「Sutra and Bible: Faith and Japanese American World War II Incarceration」(2022年春、全米日系人博物館)の準備を進めている。

(2021年6月 更新)

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ケンジ・シオカワの世界

彫刻家ケンジ・シオカワ氏が2021年6月18日に亡くなったとの最近の悲報を受け、深い悲しみが私を襲いました。私は、2017年に全米日系人博物館で開催された展覧会「トランスパシフィック・ボーダーランド:リマ、ロサンゼルス、メキシコシティー、サンパウロにおける日系ディアスポラのアート」のカタログ作成のため、シオカワ氏の見事なアトリエで光栄にも本人にインタビューをする機会を得ました。生涯のほとんどを無名の芸術家として地道に活動してきたシオカワ氏は、木材や工具、収集品や本などが置かれた心地よい混沌に満ちたアトリエで、近年突如として注目されるようになったことへの喜びに輝いていました。他者の評価に左右されることなく、何よりも自分の作品に全力を注いできたアーティストに敬意を表し、同時にシオカワ氏の仕事を世に紹介する一翼を担えたことへの感謝を込めて、私は再びこのエッセイをシオカワ氏に捧げます。 * * * * * ロサンゼルスのサウスセントラル地区にあるケンジ・シオカワ氏のアトリエは、困惑するような体験でした。コンプトンのエル・セグンド通り沿いの商業地区にあるごくありふれた建物で、簡素な防犯用のメタルドアが付いていました。一瞬住所を間違えたかと思うような場所です。そこに住んでいるアーティストを呼んでも、建物の中に入れてもらえるまでしばらくかかもしれません。彼は、作品作りなどあれこれと…

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