シャーリー・ワタナベ=ニシダ

(Shirley Watanabe-Nishida)

ロサンゼルスで生まれ育つ。幼少期はリトル東京に住み、ルンビニ幼稚園に通う。小学2年生の時にダウンタウンの中心部に引っ越し、その後も母親の日用品の買い物などの手伝いで頻繁にリトル東京を訪れる。2010年にジャパニーズ・ビレッジ・プラザで働き始める。中学時代より趣味で文章を書き始め、大人になるにつれ、英語と日本語の本を読むことに夢中になる。

(2016年9月 更新)

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第3回 イマジン・リトル東京ショートストーリー・コンテスト

お盆と町とお祖父ちゃん

土曜日の朝、僕は珍しく自分で起きた。ママは 「あら、珍しい」 と言って僕に出掛ける準備をさせた。僕は車を運転しているママに 「何処に行くの?」 と聞いた。 「何言ってるの?今日は幼稚園のお盆の日でお手伝いするって言ったでしょう?」 そうだ、今日は僕の通う東本願寺のお盆の日だ。後でベイクセールでカップケーキ買って貰おう。少し楽しみになった。 幼稚園に着いたママと僕は、すぐに手伝う教室に向かった。教室はいつもと違って椅子も机も無い。結構広いなと思った。教室の中心にはいつもと違う長いテーブルがあって、クッキーやケーキが並んでた。僕は後で買って貰うのを選びながらテーブルに沿って歩いていった。 「こうちゃん、おいで!今のうちに浴衣着せちゃうから」 ママは僕を呼び、他のママ達や先生達と話をしながら僕に青い浴衣を着せた。 「かわいい」 と皆に言われて少し恥ずかしかった。僕は男の子だから可愛いじゃ駄目なんだ。 お祭りが始まって僕は邪魔にならないようにと、教室の隅っこの椅子に座った。 ママは振り向き僕に5ドルをくれた。 「ママ忙しいから、お腹空いたらこれで何か買いなさい。でも行く時はちゃんと言うのよ。ママここに居るから」 僕はお金を受け取り浴衣の袖に入れた。まだお腹は空いてないし、友達も見当たらない。 「もう少しここに居るよ」 でも正直つまらない。周りを見渡してい…

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