第六話(前編) 「Mayumi」は今、何処?

早朝、大きなバスケットを両手でかかえた若い女性が街を歩いていた。
公園のベンチに座り、ひと休みする。空を見上げると、濃い灰色の雲がどんどん横に流れ、自分も一緒にどこかへ連れて行かれるような気がした。下を見ると、枯葉が敷き詰められたカーペットのようで、今の自分の道しるべに見えた。「きっと、正しい方向に導かれているのだ」と、立ち上がり、バスケットを大事そうにかかえ、公園を出て行った。
すると、さらに、空は曇って今にも雨が降りそうになってきた。強い冷たい風も吹いてきたので、女性は先を急いだ。バスケットの中を気づかうように、歩き続けた。雨が猛烈に降ってきて、たちまちびしょ濡れになった。バスケットにも水しぶきがかかっていた。
まだ…