世界のなかの日本と世界

咸臨丸がアメリカに渡ってから150年、日本が近代社会へ移行してからいままで、多くの日本人が世界でその足跡を刻んできた。日本の遺産を引き継ぎながら、もうひとつの国や文化を受け入れて生きる。国家という枠組みを超えて日本とつながりをもつ人たちの世界をアメリカを中心に追い、日本人とはなにか、アイデンティティとはなにかを考える。

- フロリダの日本庭園とコスプレ (3パート)
- フロリダと天橋立 (3パート)
- フロリダと天橋立~ヤマトコロニー先導者と丹後ちりめん (3パート)

*この連載は、時事的な問題や日々の話題と新書を関連づけた記事や、毎月のベストセラー、新刊の批評コラムなど新書に関する情報を掲載する連想出版Webマガジン「風」 からの転載です。

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フロリダと天橋立-その1

アメリカ南東部のフロリダ州に、日本文化を紹介するモリカミ・ミュージアムと日本庭園があることと、そこで春に行われた大きなフェスティバルの模様を前回紹介した。

日本とはあまり縁のないような場所にある「モリカミ」の名称は、森上助次という人物から由来する。いまから100年以上前にフロリダに農業移民として入植した日本人の一人である森上氏は、生前に所有する土地を地元のパームビーチ郡に寄贈し、それがもとでこのミュージアムと庭園ができあがった。また、これが縁で同郡内にあるデルレイ・ビーチという町と、彼の故郷である京都府宮津市は、姉妹都市関係を結び交流を続けている。今年も6月半ば、デルレイの高校生が数日ではあるが、宮津でホームステイをし…

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フロリダの日本庭園とコスプレ-その3

その2>>

庭園のなかをコスプレのティーンエイジャーたちが・・・

敷地内には黒い瓦屋根の本館と最初にできた平屋の建物がある。本館には、木版や着物、陶器など日本の美術品が展示されているほか、茶室が設えられている。ユニークなのは、畳の間で茶の湯を行っているときに、お茶を点てるその模様を鑑賞できるようにと、開放された部屋の外に階段状の客席がつくられているところだ。

本館内には225人を収容できるシアターもあるし、カフェではお寿司をはじめ日本食が楽しめる。日本の工芸品や贈答品などが販売されるショップも、この場所にしてはなかなか充実している。

この建物とは別に、庭園の中程にある平屋の建物では二つの常設の展示がある。一つは「子供…

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フロリダの日本庭園とコスプレ-その2

その1>>

入植当時のフロリダに思いを馳せながら

その日は金曜日ということもあって、空港内のレンタカー・カウンターは長蛇の列。待つことおよそ1時間余、ようやく三菱のセダンで空港を出たのは午後3時半を過ぎていた。この時期のフロリダにしては、それほど暑くはなくさわやかな陽射しがふり注いでいる。

デルレイ・ビーチまではすぐにハイウェイ95号にのって北上した方が時間はかからないのだが、リゾート地として名だたるフォート・ローダーデールのまちを見ようと、まずは海岸沿いを走るA1Aという道に出て、道路の両側につづく南国情緒を醸し出すパームツリーの間を走る車の列に加わった。右には砂浜と薄い青緑の海が見え、左にはホテルやレストランが建ち並ぶ…

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フロリダの日本庭園とコスプレ-その1

アメリカのフロリダ州と聞いてなにを想像するだろうか。暖かい気候に包まれたビーチリゾートか。それともときどき訪れるハリケーンか。いや、最近ならニュースにもよく登場したケネディー宇宙センターかもしれない。最南端にあるキーウェストと文豪ヘミングウェイを思い浮かべる人もなかにはいるだろう。

そのキーウェストからさらに南のキューバまではわずか90マイル(145キロ)。東は大西洋、西はメキシコ湾に面した半島の形をした州は、同じアメリカの諸州のなかで日本からはもっとも遠く感じる。かつて移民としてアメリカに渡った日本人もほとんどが西海岸に集中しており、それに比べれば東部にはその足跡は少ない。

まして、南のフロリダにはそんなものはない…

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