一世の記録を拾い集めた男 ~加藤新一の足跡をたどって~

1960年前後全米を自動車で駆けめぐり、日本人移民一世の足跡を訪ね「米國日系人百年史~発展人士録」にまとめた加藤新一。広島出身でカリフォルニアへ渡り、太平洋戦争前後は日米で記者となった。自身は原爆の難を逃れながらも弟と妹を失い、晩年は平和運動に邁進。日米をまたにかけたその精力的な人生行路を追ってみる。

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第29回(最終回) 連載を終えて

およそ1年間にわたり日米をまたにかけて活動した加藤新一という人物の生涯と業績を追ってきました。1900年に広島市で生まれ、1982年に故郷で亡くなった加藤は、戦争を間に挟みまさに20世紀を力いっぱい生き抜いた行動する人物でした。

繰り返しになりますが、私が加藤に興味を持ったのは、彼が執筆・編集した「米國日系人百年史」を知ったからでした。1961年に出版されたこの本には、アメリカ本土のほぼ全域にわたる日本人・日系人の足跡が記録されています。加藤はこの情報を得るため、車で全米を走り回りました。その距離は4万マイルにものぼったといいます。その結果は「○○州の○○に最初に入った日本人は○○だと思われる」などのように具体的に記さ…

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第28回 終わりなき世界平和の旅

国連事務総長に手紙を書く

「世界連邦」と「地球市民」を訴え世界各地を回る加藤新一は1975年7月、サンフランシスコで開かれた第一回地球市民世界大会へ出席した。その翌年の1月、加藤は当時のワルトハイム国連事務総長にあてて書状をおくった。このあたりも行動家、加藤の真骨頂が表われている。 

書状は、1976年1月20日、広島から出されたものだ。

「PLEASE ASSIST NOT TO WASTE THE PEOPLE'S TAX MONEY-FOR-WORLD PEACE: An Appeal from a Hiroshima A-Bomb Suvivor」(世界平和のために人々の税金を無駄にしないよう力添えください…

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第27回 日本から世界へ

よく 牛にひかれて善光寺詣り というが、私はこのたび善光寺詣りならぬ世界秘境「ネパール」詣りができた。それも「牛」ならぬ「地球市民」のお蔭であった。

カナダのオッタワ、北欧のブラッセル、そのほか世界連邦世界大会など、お祭りさわぎに終わりがちな大会には興味を持たなかった私が、去る一月中旬から一週間、インドの首都ニューデリーで開いた第十六回世界大会にでかけたのは、実はアーメド印度大統領やガンジー首相が地球市民登録に署名したし、来る七月末にサンフランシスコで開く第一回地球市民世界大会の支持決議を得るためでもあった。

以上は、「広島文化通信」1975年7月15日号のなかの「ネパールの旅 −『地球市民』遍路…

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第26回 地球市民となる

1900年生まれの加藤に直接会っている人は、日本で私が取材した範囲では加藤の甥にあたる吉田さんと加藤の実家近くに住む二人だけで、アメリカではロサンゼルスの広島県人会にひとりいるだけだった。

加藤が晩年精力的に関わった平和運動の関係者で加藤を知る者はいないものかとおもっていたところ、広島市役所で偶然手掛かりがつかめた。原爆で亡くなった加藤の妹や弟のことを調べようと広島市健康福祉局原爆被害対策部援護課を訪ねたとき、「原爆被害者対策事業概要」(2019年版)というものを入手した。

原爆の被害状況や被爆者対策などがまとめられているその刊行物の終わりの方に「平和関係団体名簿」として、7ページにわたりさまざまな団体の名称、所在地…

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第25回 世界連邦建設への訴え

行動するジャーナリストである加藤新一は、書き残したものはすくない。少しでも本人の書き残したものがないか、故郷広島の「広島平和記念資料館」の「平和データベース」で「加藤新一」で調べてみた。すると本と雑誌のなかからいくつか加藤の書いたものがでてきた。

その一つに「平和競存の創造」という出版物がある。「著者 加藤新一著編」、「出版者 地球友の会」、「出版年 1971年12月20日」、「頁数47」となっている。それ以上はわからないので、同資料館内の情報資料室を訪ね、実物を見せてもらった。

それは、どうやらいわゆる自費出版的な冊子で、奥付には編集者加藤新一、発行人加藤新一とある。発行所は「地球人友の会」となっているが、その…

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